山小屋での生活を


by yamagoya333

蝶のように

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 6時限目が終わって、職員室に戻ると、手洗い場が、使用禁止になっていました。
 トイレは少し遠いので、チョークの粉が手についたまま、校門の前に立ちました。
 (これが、失敗のもと)


 朝夕、生徒たちに「おはよう」と「さよなら」の声かけをしています。

 集団の生徒たちに、もみくちゃにされることもあります。
 わざわざ、筆者の胸ぐらをつかんで、大きな声で、「さよおならぁ」と叫んで帰っていく「やつ」もおります。

 筆者の前で立ち止まり、深々とお辞儀をして帰っていく男子学生がいます。
 ニコニコしながら、手を振って、筆者の「さよなら、また明日ぁ」に応えてくれる女子高生もいます。

 みんな、表現の方法は違っても、心を通わせてくれようとしているのだと感じて、嬉しくなることもあります。





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 本日は、一人の女子高生が、しばらくの間、筆者のそばに立っていました。
 下校する生徒が、途絶える瞬間を待っていたかのように、「先生ぇ」と言って、両手を差し出してきました。

 戸惑いつつ、例のチョークのついている手で、包み込みました。
 柔らかくて、温かい掌でした。

 ふわりと微笑んだ彼女は、きびすひるがえし、坂道を下りていきました。

 きっと、何か伝えたいことがあったのでしょう。
 確かに受け取りましたよ。


 一陣の風に乗って、一羽の蝶が筆者の掌に舞い降りてきたようです。
 あっという間もなく、迎えの風にさらわれていきました。


 SS高校の教師になって、本当によかったなと思いました。
 あの女生徒が代表で、手を差し伸べてきてくれたような気になりました。


 しかし、いくら声をかけても、知らんふりの生徒が多いのです。
 現実は、楽観的ではない状況にあることだけは、お伝えしておきます。
 



        秋の蝶黒き影ともなりて舞ふ     高木 晴子

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by yamagoya333 | 2010-10-14 00:25 | 山小屋日誌