帳面

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 久しぶりに娘が山小屋に上がってきた。

 作業していると、一人ではどうしてもできない工程がでてきた。
 家にいた娘を、携帯電話で呼び出した。

 気持ちよく手伝ってくれた。
 おかげで、作業はスムーズに終了した。


 作業にかかる前に、荷物の整理をした。

 プラスチック製のバットが出てきた。
 娘と二人で、山小屋の広場で遊んだものだ。
 いつのころから、野球遊びをしなくなったのだろう。

 もうこのバットで、娘と遊ぶことはないだろうな。
 そう考えると、胸の中で少しの寂寥感が動いた。


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 作業を終えて、娘がくだんのバットを見つけ出した。
 「昔は、これでよく遊んだね」

 「まだボールはあるぞ、久しぶりに野球をやってみるか」
 なかば、NOの返事を覚悟していた。

 「やろうか!!」

 期待していなかった返事が返ってきた。

 高校三年生にしては、精神年齢の低い娘ではあるが、父親の相手をしてくれるとは思ってもいなかった。
 草を刈ったばかりの「グラウンド」で、父親がボールを投げて、娘が打ち返す。
 男のような鋭い振りをする。


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 学校の制服以外は、スカートをはかない。
 ピンクや赤色の服はきない。
 父親としては、もう少し女らしく育ってほしかったかな。


 昔日の想いが蘇ってくる。
 まぶしい西日をを浴びて、一瞬目の前が真っ暗になる。
 その黒い瞼の裏のスクリーンに、少女のころの娘の姿が映る。


 こういうことは、もうあるまい。
 帳面が、1ページ消えた。


       大空に又湧き出でし小鳥かな     高浜 虚子

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by yamagoya333 | 2011-09-25 00:01 | 山小屋日誌