ほんの 小さな

 昨夜、信号待ちをしていました。

 隣の斜線に、右折の車が横に来て停まりました。
 その気配で、右を向きました。
 後部の窓に、透き通った二つの瞳がこちらを見ています。

 その瞳に、アイコンタクトをとってみました。
 
 瞳たちに、輝きが増しました。
 アイコンタクトは、見事に成功しました。


 少し、瞳の角度が変わりました。
 顔の輪郭がはっきりしてきました。
 3歳くらいの可愛らしい女の子顔が、くっきりと浮かび上がります。


 右手を振ってみました。
 即座に、左手がひらひらとします。

 もう一度、顔をそちらへ向けると、女の子の姿が見えません。
 窓の下に隠れているみたいです。

 フロントガラスに視線を移しました。

 ふいっと、右を向くと、二つの瞳が、隣のおじさんを監視していました。
 彼女は、ピンク色のフードをぎゅっとかぶり、顔を隠してしまいました。

 見ていると、そのまま後部座席に横になってしまいました。
 それから、頭をもたげると、ちょっとフードを持ち上げて、こちらの存在を確かめているようです。

 それからは、フードを上げたり、下げたりと、せわしない行動をくりかえします。

 信号が青になりました。

 こちらは左に、女の子の父親は右にハンドルを切り始めました。

 別れのときを察したかのように、女の子はむくりと起き上がり、小さな掌を右に左に ・・・


 時間にすれば、ほんの1分もあったでしょうか。
 長く・長く感じられる、楽しい時間を過ごしました。

 心が、腹いっぱいになりました。


       冬来ると父子はげましあひにけり     宮下 翠舟

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by yamagoya333 | 2012-11-18 00:04 | 山小屋日誌