山小屋での生活を


by yamagoya333

巣立ちに

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 本日は、市内のある中学校の卒業式に、来賓らいひんとして参列してきました。
 総勢110名の巣立ちに立ち会うこととなりました。

 筆者の目の前に、一人の女生徒が座っています。
 Yが頭文字の生徒です。
 クラスの出席番号が、最後の生徒です。
 列の一番後ろで、二人がけの椅子に一人で腰掛けています。


 Yさんは、端正な顔つきをしています。
 むしろ、どの女生徒よりも、大人びてみえます。

 式が始まり、閉会の辞が宣せられるまで、終始無表情でした。
 式の終りの校歌斉唱のときも、一度も口を開けませんでした。

 Yさんの中学校生活を、私なりに思い遣っておりました。


 
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 式が終り、卒業生が全員で合唱をすることになりました。

 4段4列に並びました。
 正面左3分の1が女生徒、残りが男子生徒です。

 生徒指導を受けて、卒業証書を受け取れなかった男子生徒が下段に立っています。
 先生から髪の毛を黒く染め直されたようです。
 その生徒は、両手をポケットに突っ込み、片足を「く」の字に曲げています。
 仮にK君としておきます。

 一曲は、さらっと終わりました。

 ラストの二曲目を歌い始めた卒業生たちに、変化が生じました。

 K君が下を向いたまま、歌い始めました。
 少し恥ずかしそうに見えます。


 下段女生徒の3人が笑い出しました。
 大きな声をあげています。

 2段目真ん中の女生徒が、泣き始めました。
 両手で顔をおおっています。

 すぐ後ろの女生徒が、彼女の肩をこぶしで揺すります。
 その直後に、元気付けていた生徒が泣き始めました。

 右の生徒が手を差しのべます。
 その子も泣き出しました。
 その後ろ、左の生徒、泣いている生徒に触れた人は、ことごとく右にならえです。


 先ほど笑っていた3人の女生徒は、泣き顔に変わっています。
 「泣く」という行為の前触れだったのかもしれません。

 
 さすがに男子生徒で泣く者はいませんでした。
 しかし、1曲目ではなかった大音量の歌声を発しています。

 例のK君も、正面を向いて、大きく口を開けています。
 しゃに構えた表情も消えて、そこには15歳の純真な男の子の顔がありました。


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 とかくドライであるといわれがちな現代っ子ではあります。
 しかし、最後の最後にきて、それぞれの3年間が胸を満たし、抑えていた感情を表出したものだと理解しました。

 大人が正面から説教したからではなく、今まで自分を支えてきてくれた人たちの存在に気づいたからだと思います。


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 合唱が終わって、生徒が各自の席に戻ってきました。

 Yさんが、セーラー服のそでで顔をぬぐっています。
 えもいわれぬ、素敵な表情をしています。


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 踏み出す一歩は、速さも歩幅もそれぞれが違います。
 「マイペース」でいいんだよと、声をかけてあげたい思いです。

 ここで、110羽の鳥たちの巣立ちに立ち会えたことに、わが身の幸せを感じています。


 
       つまだちて卒業式の歌うたふ     清崎 敏郎


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by yamagoya333 | 2013-03-14 21:51 | 山小屋日誌