するりと

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 暮れの28日に、長男が東京から戻ってきた。
 
 長い不在を瞬時に圧縮し、するりと自分の椅子に座る。
 まるで、たった今、散歩から戻ってきたかのごとくに。


 いつものようにパソコンの前で、パシャパシャとやっている。
 次男が、「にぃちゃぁ~~ん」と言いながら、兄の後ろでパソコン画面に見入る。

 娘が、二人の気配を察して、「にちゃんがたぁ~~」と、声を伸ばして彼らの横に。
 長男が、東京へ就職していく前までの光景だ。


 何をするでもなく、飯を食っては、ベッドに寝転がって本を読んでいる。

 今回、目新しいことといえば、長男が本格的にカメラをやり始めたことだろうか。
 彼の祖父と叔父は、それぞれ「暗室」を設えるほど、カメラに没頭していた。

 筆者は、図らずもデジカメ(写真の技術がなくても・・・)で、拙いブログのために撮影をするようになっただけだが ・・・

 息子は、本格的な一眼レフと各種のレンズを駆使しているようだ。
 なにか、一族に流れているものを感じずにはいられない。


 昨夜、思いついて、皿倉山の夜景を撮影することした。
 勿論、筆者は、その撮影技術を持ち合わせてはいない。

 凍える空気と静寂のなかで、息子は撮影を始めた。
 一時間ばかり付き合っただろうか、愛おしいような時間が闇の中に吸い込まれていった。
 これから先も、もうこんな機会はないような気がする。


 息子と、特に何かを話したわけではない。
 車の中でも、無言の時間が流れる。

 それでいて、気持ちが通じていないとは思わない。
 そこに、言葉が介在しないだけのことだと思う。


 昨夜も、夜中までゲームをしたり、本を読んでいた。
 そのため、昼近くまで寝ていた。
 「どこか撮影に連れて行こうか」と、提案した。
 彼は、「いや、いい」とさらりと答えた。


 山小屋へ上がろうかと思った。
 しかし、彼が家にいるのなら、私もと。
 晴れているのに、本を3冊も読んでしまった。


 明朝早くに、息子は、東京へと戻っていってしまう。
 例の「行ってきます」という言葉を残して。

 
 主人のいなくなった部屋には、再び、ゆるやかな時間が流れ始めることだろう。



       初便り一子を語るつまびろか     中村 汀女


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 ※ 写真は、長男の手による
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by yamagoya333 | 2014-01-03 22:31 | 山小屋日誌