2006年 09月 20日
高西風
台風一過、爽やかな秋空が広がっています。
空を見上げていると、心が豊かになってきますね。
顔を撫でてゆく風が快いころとなりました。
今回は、「秋の風」について、少し?お話をいたします。(と言いつつ、長いかも!
一年中、「風」は吹いているのですが、我々の先人達は、繊細な感覚で、折々の「風」を識別し、何とも見事なネーミングを施しています。
今回は、そのいくつかを紹介いたしましょう。
籠もらばや色なき風の音聞きて 相生垣 瓜人
*籠もる(こもる)
*「色なき風」(秋) 華やかさを持たぬ秋風を表したことば。素風ともいうように秋の風には、白く透明なものを覚える。
どうです、先人達は、風の中に「色」を感じているのです。
また、秋の風には、「音」が意識されていることにも気づきます。
爽籟に寂光雲を流れたり 大竹 孤愁
*爽籟(そうらい)「秋」 秋風の爽やかなひびきをいう
*籟…①三穴の笛 ②声・音・ひびき(「天籟」などと使う)
風の音を「籟」と表現して、はっきりとした「音」を意識しているようです。
秋声や眼鏡はずせば遠ち薄く 北野 民夫
*「秋の声」(秋) 秋は、吹き渡る風の音や雨の音にも侘びしさを覚え、草木のそよぐひびきにも、しみじみした思いをさそわれる。それらを「秋の声」といい「秋声・しゅうせい」ともいう。
○○の声を聞くようになると使えば、何かがすぐそこまで来ているといった感じがしますね。
この「秋の声」は、その筋とは、ずれているようです。
でも、いい表現ですね。
ところで、色のついた風もあるのですが、紹介いたしましょう。
青北風や目のさまよえば巌ばかり 岸田 稚魚
*青北風(あおぎた)「秋」 秋のはじめころの晴れた日に吹く北寄りの風で、この風が吹くと、気温が下がる。
*巌(いわ)
秋の風には色がないと表現してみたり、青い色を感じてみたりと、先人の発想は自由奔放です。表現に大胆さの足りない筆者には、大きな刺激です。
では、最後に空の高さが意識されているこの句で締めくくることにいたしましょう。
高西風に秋闌けぬれば鳴る瀬かな 飯田 蛇笏
*高西風(たかにし)「秋」 晩秋、稲の取り入れのころ、急に吹く強い北西の風で、漁船や稲に被害を与えることが多い。
*秋闌(た)けなわ
いかがでしたか、季語には、なにかしら私たちの心を和ませてくれたり、ホッとされてくれたりするものが潜んでいますね。
みなさまも、爽やかな秋を満喫されてください。
そのおりに、これらの句の一節が、ふと心に浮かんでくれば幸いです。
by yamagoya333
| 2006-09-20 08:40
| 山小屋日誌