2010年 10月 14日
蝶のように
6時限目が終わって、職員室に戻ると、手洗い場が、使用禁止になっていました。
トイレは少し遠いので、チョークの粉が手についたまま、校門の前に立ちました。
(これが、失敗のもと)
朝夕、生徒たちに「おはよう」と「さよなら」の声かけをしています。
集団の生徒たちに、もみくちゃにされることもあります。
わざわざ、筆者の胸ぐらをつかんで、大きな声で、「さよおならぁ」と叫んで帰っていく「やつ」もおります。
筆者の前で立ち止まり、深々とお辞儀をして帰っていく男子学生がいます。
ニコニコしながら、手を振って、筆者の「さよなら、また明日ぁ」に応えてくれる女子高生もいます。
みんな、表現の方法は違っても、心を通わせてくれようとしているのだと感じて、嬉しくなることもあります。
本日は、一人の女子高生が、しばらくの間、筆者のそばに立っていました。
下校する生徒が、途絶える瞬間を待っていたかのように、「先生ぇ」と言って、両手を差し出してきました。
戸惑いつつ、例のチョークのついている手で、包み込みました。
柔らかくて、温かい掌でした。
ふわりと微笑んだ彼女は、踵を翻し、坂道を下りていきました。
きっと、何か伝えたいことがあったのでしょう。
確かに受け取りましたよ。
一陣の風に乗って、一羽の蝶が筆者の掌に舞い降りてきたようです。
あっという間もなく、迎えの風にさらわれていきました。
SS高校の教師になって、本当によかったなと思いました。
あの女生徒が代表で、手を差し伸べてきてくれたような気になりました。
しかし、いくら声をかけても、知らんふりの生徒が多いのです。
現実は、楽観的ではない状況にあることだけは、お伝えしておきます。
秋の蝶黒き影ともなりて舞ふ 高木 晴子
by yamagoya333
| 2010-10-14 00:25
| 山小屋日誌