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例のケーキ

 3月1日は、長男の誕生日。

 彼が中学を卒業してから、この日になると、息子のために誕生ケーキの大き
な箱を持ってきてくれる人がいる。

 彼が、中学時代にお世話になった塾のR先生だ。
 彼が高校生になってからは、毎年、我が家を訪問してくれる。
 「春の使者」というには、体躯が大きすぎる。
 しかし、可愛らしい、邪気のない澄んだ目をしている。
 やはり、「春の使者」だ。

 R先生の塾は、こぢんまりとしている。
 自分のマンションを教室にしている。
 外部へ向けての宣伝活動は、一切しない。
 すべて、口コミで生徒を確保している。

 寺子屋の雰囲気を彷彿ほうふつとさせる塾だ。
 生徒の恋愛・失恋から友達関係・いじめ・親の説教・食事のことまで、全てを抱え込んでいる。

 卒業生の結婚式に招待され、じいちゃんが亡くなったら葬式へ。
 祝儀・不祝儀で、R先生は、大変だ!
 しかし、心は大金持ちだ。
 生徒の誰からも、慕われ、恋人が出来たと言って、彼女を自慢しにやって来る。
 子供が生まれたと言えば、かわいいから見てくれと連れてくる。

 R先生の狭い?部屋には、いつも誰かがいて、本当に賑やかだ。
 筆者が、言うのも何だが、R先生は、行き方が上手ではない人だと思う。
 しかし、豊かな人生を送っている人だと、心からそう思う。
 尊敬に値する先生だ、R先生は。

 そんなR先生にかわいがられた息子は、幸せだ。
 そんな愚息も、今春大学を卒業する。
 4月からは、就職して東京へ行ってしまう。

 今年は、3月1日に、R先生を訪問するようにし向けた。
 ケーキの受け渡しも、今年が最後だ。

 いただいたケーキを、家族のみんなで、味わった。
 温かい味がした。



       春の雨誰からとなく目覚めけり     阿部 みどり女
by yamagoya333 | 2008-03-02 22:28 | 山小屋日誌